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東京高等裁判所 昭和61年(ネ)2025号 判決 1987年5月11日

控訴人 長田敏雄

控訴人 長田露子

右両名訴訟代理人弁護士 細田良一

被控訴人 秋葉幸治

右訴訟代理人弁護士 白石光征

主文

本件控訴を棄却する。

控訴費用は控訴人の負担とする。

事実

第一、当事者の求めた裁判

一、控訴人ら

原判決を次のとおり変更する。

被控訴人は控訴人らに対し、金三二三万五〇〇〇円及びこれに対する昭和六〇年七月一二日から支払済みに至るまで年五分の割合による金員を支払え。

訴訟費用は、第一、二審とも被控訴人の負担とする。

二、被控訴人

控訴棄却の判決

第二、当事者双方の主張及び証拠関係

原判決事実摘示及び当審記録中の書証目録の記載と同一であるから、これを引用する。

理由

一、当裁判所も、控訴人らの本件請求は原判決が認容した限度で理由があり、その余は理由がないと判断するが、その理由は、原判決七枚目表八行目から同裏二行目末尾までの三項を次のとおり改め、四項を付加し、同裏三行目の「四」を「五」と改めるほかは原判決理由と同一であるから、これを引用する。

次に、控訴人らは、賃借権の更新に際しては更新料を支払う事実たる慣習があると主張するので検討するに、借家法一条の二、二条、六条によれば、借家法の適用のある建物の賃貸借は、その期間が満了する場合であっても、一定の要件の下に法定更新されることになっており、賃貸人は正当の事由がない以上更新を拒むことができず、また右法定更新については更新料の支払を要しないことが明らかである。したがって、右法定更新に当たり更新料を支払う慣習が成立する余地はない。

もつとも、東京都内においては、建物賃貸借の期間満了に際して更新料の支払がなされることが多いことは当裁判所に顕著な事実であるが、右のような事例は当事者の合意により賃貸借を更新し、双方の合意に基づき更新料を支払つているものと認めるのが相当であり、右のような事例が多いからといつて法定更新の場合に更新料を支払う慣習があるということではない。

以上により、控訴人らの前記主張は採用することができない。そして、被控訴人が控訴人らに対し、本件賃貸借の更新につき更新料を支払うべき義務があることを認めるに足りる証拠はない。

次に、前記認定事実によれば、被控訴人は控訴人らに対して昭和五九年一二月分から昭和六〇年六月分まで毎月五〇〇〇円の割合による共益費合計三万五〇〇〇円を支払う義務があるものというべきところ、これが弁済されたことその他の消滅事由の存在について、被控訴人はなんら主張立証をしない。

二、以上によれば、控訴人らの本件請求は原判決が認容した限度で理由があるから、右限度で認容し、その余は理由がないから棄却すべきであり、これと同旨の原判決は相当であつて本件控訴は理由がない。

よって、本件控訴を棄却し、訴訟費用の負担については民事訴訟法九五条、八九条を適用して主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 森綱郎 裁判官 高橋正 清水信之)

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